北陸・甲信越地方

白骨温泉(長野県松本市安曇)【由来と歴史】

白骨温泉 北陸・甲信越地方
By: sojikawase
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乗鞍岳の山腹にある自然豊かな温泉

「白骨温泉」は北アルプス南の乗鞍岳の東麓に位置する長野県松本市安曇にある温泉地です。松本市の西側に広がる標高1,400mの乗鞍岳の渓谷の底から湧く温泉で、石灰を含んで白濁した乳白色の湯が特徴です。泉質は単純硫化水素泉。昭和49年には国民保養温泉地に指定されています。白樺の樹林に囲まれた渓谷の中で浸かる露天風呂はいかにも秘境の温泉といった感じです。

開湯の歴史

開湯の時期ははっきりしませんが、鎌倉幕府と北陸地方を結ぶ「鎌倉往還」が開通した際には既に存在が確認されているので、現在まで600年以上の歴史がある事になります。江戸の元禄時代(1688-1703)になってからは本格的な温泉宿が建ち並ぶ様になり、効能高い温泉に湯治に訪れる客が多くなりました。その高い効能は科学的根拠はありませんが、「3日入れば、3年風邪を引かない」とまで伝えられる様になり、乗鞍岳の麓で「五彩絢爛」な景色に囲まれて温泉に浸かるのはまさに心も体も癒されます。

白骨温泉
白骨温泉 / photo by sojikawase

「白骨温泉」の由来

「白骨温泉」の由来は中里介山の小説「大菩薩峠」にあります。「白骨温泉」は元々「白舟温泉」、「白船温泉」と呼ばれていました。栃の大木をくり抜いて舟(船)の形にして温泉の浴槽として使用し、その中に溜めた温泉の石灰分が浴槽の内側に付着した様子が「白舟(船)」に見えた事から「白舟(白船)温泉」と呼ばれるようになりました。明治時代の吉田東吾氏の大日本地名辞書には「白骨の温泉、白船の湯」と記されています。「白船温泉」が「白骨温泉」と呼ばれるようになったのは大正2年から新聞に連載した中里介山の小説「大菩薩峠」の影響が大きいです。1913年~1941年まで28年間に渡って毎日新聞や読売新聞に連続小説として掲載され、当時はまだ「白船」と呼ばれていた温泉を「白骨温泉」として紹介しました。中里介山氏は「白骨温泉」に初めて温泉宿を開いた「湯元斎藤旅館」に滞在した際に、小説の着想を得たといわれています。温泉にはカルシウムを含んだ石灰成分、石灰華が結晶化して湯の中に含まれていますが、それが人骨の様に見えた事から「白骨温泉」と紹介したのではないかと思われます。

白骨温泉1
白骨温泉1 / photo by r-lab

【白骨温泉の歴史】武田信玄と銀山

鎌倉時代には既に開湯していたとされる「白骨温泉」ですが、戦国時代には武田信玄配下の将兵や銀山労働者にも利用されていたと思われます。乗鞍岳の麓の別の箇所では多樋銀山が開発され、多くの労働者が採掘、精錬作業に従事しました。銀山でしたが鉄砲の弾ともなる鉛が多く産出され、戦国の世の貴重な軍事拠点として発展しました。過酷な銀山労働で怪我を負った者や体調を崩した者が銀山から峠を越えて一里半の「白骨温泉」に療養にいったのではないかと考えられています。また、「下部温泉」と同様、武田軍の傷病兵が療養に訪れていたとも考えられます。

日帰り入浴・温泉

白骨温泉の日帰り入浴
白骨温泉の日帰り入浴 / photo by r-lab

白骨温泉では日帰り入浴が可能な旅館や施設が少なからずあります。小梨の湯笹屋、泡の湯旅館本館、媒香庵、白船荘新宅旅館、かつらの湯丸永旅館、山水観湯川荘、おやすみ処球道、柳屋、大石館、白骨温泉公共野天風呂です。

小梨の湯笹屋は温泉街から少し離れた客室10の一軒宿です。周囲を白樺林に囲まれた静かな宿には男女別の内風呂と貸切の露天風呂があります。内湯は女性用の姫の湯と男性用の殿の湯がありますが、2湯とも湯船の周りはガラス戸で仕切られていて、白樺林を眺めながら湯に浸かる事ができます。

泡の湯旅館は明治45年創業の老舗旅館で、日帰りでは大浴場及び混浴露天風呂に入浴できます。泡の湯と称される通り源泉は毎分1,730リットルの湧出量の高濃度の炭酸泉で一度入浴すれば沢山の気泡が体にまとわりついてきます。日帰りの場合は旅館裏手の専用入口から入りますが、10:30から14:00までの利用となります。入浴料は大人820円(中学生以上)、小人(3歳~小学生)510円です。男女別の内湯には「ぬる湯」と「あつ湯」があり、「ぬる湯」は源泉掛け流しで無色透明で泉温は約37℃、「あつ湯」は源泉を熱交換にて昇温、泉温約40℃となっています。又、内湯の露天風呂として6人サイズのコンクリート造りの浴槽があり、泉温約42℃の薄青い白濁湯です。更に、外には野天風呂なる20人ほどが一度に入れるサイズ混浴露天風呂があり、旅館の名物となっています。周囲は広葉樹林に囲まれた大きな露天風呂は開放的な気分になりますが、女性はやはり躊躇してしまいます。しかし、湯は白濁色で体は見えない上に、女性はバスタオル着用可能で、入口は見えない様に湯に浸かってから露天に出れる為、共用といえども入り易くはなっています。

媒香庵は旅館ではなく食事と日帰り入浴ができる施設です。営業は4月から11月までで冬季は休業、9時から17時までの営業で水曜日は定休日、入浴料は700円です。温泉は7~8人サイズの長方形の木造の浴槽がある男女別の露天風呂が1つずつあるのみです。

白骨温泉観光マップ

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