加賀温泉郷の一つ
「山中温泉」は大聖寺川の渓谷沿いに広がる石川県加賀市の温泉です。
泉質はナトリウム・カルシウム‐硫酸塩泉、泉温48.2℃。「山代温泉」、「片山津温泉」と同じ「加賀温泉郷」の一つで、「山代温泉」に次ぐ規模の温泉です。
「山中」の名前通り山の中、山間部に温泉街が開けており、「鶴仙渓」といった景勝地があります。
山中温泉の開湯・歴史
開湯は奈良時代にまで遡り、高僧行基が発見したとされています。
菅生の社を訪れた行基が紫雲が見えた山の中に入ると老僧に出会い、温泉が在る事を告げられたといわれています。
開湯伝説にはもう一つあり、平安時代末期に能登の領主長谷部信連が発見したとされています。
信連が鷹狩りをしていたら一羽の傷ついた白鷺が水に浸かって傷を癒していました。
長谷部信連が白鷺に近づくと女性に変わり、薬師如来の化身と名乗ったその女性が温泉の場所を教えてくれたのです。
信連がその場所を掘り返してみると温泉が湧き出した為、この地に宿を開いたのが「山中温泉」の旅館のはじまりといわれています。
松尾芭蕉が愛した温泉
「山中温泉」は松尾芭蕉に深い関わりのある地として知られています。
江戸時代の元禄二年に芭蕉は「奥の細道」の行程の途中で立ち寄り、旅館「泉屋」に9日間も滞在しています。
芭蕉は「山中や菊は手折らじ湯の匂い」と山中の湯に浸かるだけで長生きできるという意味の句を詠んでいます。
ちなみに菊とは不老長寿の薬として知られた菊の万能薬の事を指し、山中温泉の効能はそれに勝るとも劣らないという評価です。
更に、芭蕉は「山中温泉」は有馬、草津と並ぶ「扶桑(日本)三名湯」の一つとして絶賛しています。
共同浴場総湯「菊の湯」
「山中温泉」には芭蕉の句に由来する共同浴場の総湯「菊の湯」があります。
昭和初期までは各旅館に内湯がなかった為、宿泊客は皆「湯ざや」と呼ばれた共同浴場を利用していました。
現在は各旅館にも内湯がありますが、「菊の湯」が共同浴場として日帰り入浴でも利用できます。
「菊の湯」は男湯と女湯が別の建物となっており、女湯は山中節の劇場「山中座」に併設されています。
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