栃木県北部の山奥に広がる温泉
「湯西川温泉」は栃木県北部の福島県境の山奥の湯西川沿いの渓谷に広がる栃木県日光市湯西川の温泉です。
泉質はアルカリ性単純温泉。湯西川温泉駅からバスで約30分。
「鬼怒川温泉」より更に北の福島県との県境に近い地域にあります。
標高750メートルほどの山奥の険しい山々に囲まれた日光国立公園内にある温泉で、渓谷沿いには旅館や民家が建ち並んでいます。
旅館や民宿では湯西川で獲れた魚や野鳥、キノコなどの山菜を炉端で焼く囲炉裏料理がおすすめです。
囲炉裏料理には川魚、鹿肉、熊肉、野鳥の肉などを挽いて味噌や山椒の芽と合わせて叩いてへらにつけた「みそべら」と呼ばれる料理があります。
山里ならではの食材を囲炉裏で焼く豪快な料理として「湯西川温泉」の名物料理となっています。
【歴史】平家落人伝説が残る温泉地
「湯西川温泉」の発祥は天正元年(1573年)で400年以上の歴史がありますが、その始まりは平家の落人の平忠実の子孫が温泉を発見した時とされています。
源平の合戦に敗れた平氏の一族郎党は落人となって各地に落ち延びましたが、湯西川の一帯は平忠実の一族が落ち延びた地と言われており、現在でも忠実の子孫が暮らしています。
源氏の追討を逃れて山奥の秘境ともいえる湯西川に住み着いた忠実一行は、源氏の陰に怯えて山奥での生活を生き抜いたのです。
忠実は湯西川で生活する中である時雪が積もらない場所を見つけ、調べてみると温泉が湧き出ていました。
忠実は温泉の事は秘密にして、馬の鞍や宝物を傍に埋めたといわれています。
後に忠実の子孫である伴対馬守が同じように温泉を見つけ、宝物も掘り起こしたとされています。
伴氏はそれ以来温泉を守る湯守として忠実の発見した温泉を守り続けたのです。
温泉を発見して5年後の1578年に伴氏は「本家伴久萬久旅館」を創業しました。
湯西川の地で最初に温泉を見つけた忠実がなぜ温泉を秘密にしたかは定かではありませんが、もしかしたら温泉が人を呼ぶ事につながり、ひっそりと暮らしている自分達が発見されて身の危険につながると考えたのかもしれません。
そうして温泉の存在を隠してひっそりと暮らした忠実の子孫が暮らす湯西川では現在でもその名残りが残っています。
湯西川では鯉のぼりを上げない、鶏を飼わないなどの風習があり、これらは全て自分達の存在を気づかれないためです。
遠くから見て人里があるのがわかれば、源氏の追討の対象になるかもしれません。
自分達が生き残る為にこうした風習が忠実に守られてきたのでしょう。
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