日本最古の温泉
「道後温泉」は日本で最も古い温泉である「日本三古湯」の一つで、三千年の歴史を誇る四国愛媛県松山市の温泉です。
万葉集、日本書紀や源氏物語にも登場する温泉で、聖徳太子、天智天皇、天武天皇など皇族の方々や夏目漱石、正岡子規、高浜虚子などの文人も来湯した由緒ある温泉です。
「道後温泉」のシンボルともいえる「道後温泉本館」は皇族専用の浴室もあり、また夏目漱石の小説「坊ちゃん」の舞台ともなりました。
最近ではスタジオジブリの作品「千と千尋の神隠し」の舞台のイメージとされた事もあり、日本の温泉文化の歴史を残した情緒を今でも感じる事ができます。
歴史も由緒もある日本の代表的温泉ですが、「道後温泉本館」は道後温泉の共同浴場として整備されており、温泉街の宿泊客でも入湯するために足を運びます。
「道後」の由来
愛媛県松山市の「道後温泉」がなぜ「道後」と呼ばれるようになったのかは、大化の改新があった飛鳥時代にまで遡ります。
大化の改新以後に各地に行政府たる国府がおかれましたが、伊予の国があった愛媛地方では国府が置かれた地域を「道中」と呼びました。
そして、伊予の国の中でも「道中」を除いた京に近い地域を「道前」、遠い地域は「道後」と呼ばれるようになりました。
白鷺伝説
「道後温泉」は日本最古湯の一つで三千年の歴史があるといわれる温泉ですが、その始まりは古代に白鷺が温泉を浸かった事がきっかけとされています。
足に傷を負った白鷺が岩の間から湧き出る湯に毎日足を浸していた所、何日もするとすっかり傷が癒えて飛び立っていきました。
それを見ていた人々が傷を癒した湯を見てみると温泉であり、その後「道後温泉」として利用されるようになったといわれています。
道後温泉本館
「道後温泉本館」は1894年(明治27年)に完成した木造三層楼の建物で、屋上には伝説の白鷺を飾った「振鷺閣(しんろかく)」が造られています。
「振鷺閣」には時を知らせる太鼓があり、毎朝6時の営業開始時と昼の12時と夕方の6時に計三回打ち鳴らされます。
本館は「道後温泉」のシンボル的存在として温泉街の中心に位置しており、本館を中心に「道後温泉」の商店街や宿場町が広がっています。
1994年(平成6年)には昔からの温泉文化を残す建物として認められ、公衆浴場としては初めて国の重要文化財に指定されています。
又、2007年(平成19年)には松山城と共に美しい日本の歴史的風土100選にも選定されています。
本館では「神の湯」と「霊の湯」が利用できますが、入浴コースには「神の湯階下」、「神の湯二階席」、「霊の湯二階席」、「霊の湯三階個室」の4つがあります。
「神の湯階下」は1階の「神の湯」に入浴するだけですが、「神の湯二階席」では「神の湯」に入浴するだけでなく2階の休憩室でお茶と菓子のサービスも受けれます。
「霊の湯二階席」では「霊の湯」入浴、2階で休憩の他に皇族専用の浴室である「又新殿(ゆうしんでん)」を観覧する事ができ、「霊の湯三階席」では「二階席」の内容に加えて3階の個室で休憩する事ができます。
利用時間は1時間以内、個室の場合でも1時間20分以内となっており、いかにも多くの人数が利用する事を想定した共同浴場となっています。
夏目漱石と「道後温泉」
数々の文豪や偉人とも縁が深い「道後温泉」ですが、特に夏目漱石とは深い関わりがあります。
それは「道後温泉」が小説「坊ちゃん」にも登場しており、夏目漱石が手紙の中でも「道後温泉」の事を述べているからです。
夏目漱石は道後温泉が完成した明治27年の翌年に松山に英語教師として赴任しており、たびたび温泉を利用していたようです。
漱石は手紙の中で「道後温泉はよほど立派なる建物にて、八銭出すと三階に上がり、茶を飲み、菓子を食い、湯に入れば頭まで石鹸で洗ってくれるような始末、随分結構に御座候」と書いています。
「他の所は何を見ても東京の足元にも及ばないが、温泉だけは立派なものだ」とも後に執筆した小説「坊ちゃん」の中でも登場しており、漱石がいかに「道後温泉」を評価していたかが伝わってきます。
「道後温泉」は「坊ちゃん」の中では「住田の温泉」として描かれていますが、温泉周辺には「坊ちゃん」ゆかりの名所が多くあります。
「道後温泉本館」は別名「坊ちゃん湯」とも呼ばれており、本館の3階には漱石が湯上りに休憩したとされる部屋を再現した「坊ちゃんの間」もあります。
また、主人公の坊ちゃんが松山に赴任する際に乗ったとされる列車が「坊ちゃん列車」として道後温泉駅前に展示されています。
現在はディーゼル式の別の軌道式列車が後継機の「坊ちゃん列車」として松山市内を運行しています。
道後温泉の日帰り入浴
道後温泉といえば真っ先に思い浮かぶのが道後温泉本館ですが、実は他にも日帰り入浴ができる温泉があります。
本館の他には道後館、ふなや、花ゆづき、茶波留、ホテル奥道後、山の手ホテル、東道後のそらともり、ホテル古湧園、椿の湯などです。
ふなやは創業江戸時代寛永年間からと約380年続いており、道後温泉では最も古い宿です。
夏目漱石、正岡子規、高浜虚子が訪れた宿でもあり、宿の玄関先には漱石が詠んだ句「はじめての鮒屋泊まりをしぐれけり」の石碑が立っています。
そんな歴史のある老舗宿に宿泊できれば嬉しいですが、日帰りでの入浴も可能です。
道後館は温泉街の高台にある宿で、建物は世界的建築家、黒川紀章氏のデザインによるものです。
船をイメージしたといわれる重厚なコンクリート造りの外観とは異なり、館内は蔵屋敷又は本陣を思わせる様な和風のデザインです。
大浴場には檜や岩を使った内湯や露天風呂、サウナ、寝湯や打たせ湯などがあります。
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