日本人と温泉

火山の国日本の温泉

日本人と温泉は古来より切っても切れない強い繋がりで結ばれてきました。温泉は日本人にとって大変貴重な大地の恵みとして崇拝されてきた歴史があり、日本人の生活や文化、そして思想にまで深く踏み込んできました。日本人ほど温泉が好きな民族はいないと良くいわれますが、これはひとえに日本が活火山の地層で温泉が多数湧き出ていて、全国各地で豊富な湯量の温泉に長らく触れてきたからに他なりません。豊富に湧き出る温泉はその周辺においては温泉宿、宿場町、歓楽街などの繁栄をもたらし、同時に日本人独特の温泉文化の発展を促してきました。日本人は温泉だけでなく、周りの景色や気候などの環境との調和を重視し、和風建築の旅館や庭園の雰囲気、料理や宴席のおもてなしなど総合的な作品のような温泉を作り上げてきたのです。


温泉宿 / nidate

 

宗教と温泉

豊富な温泉資源と共に日本人の温泉利用の形態に影響を与えて来たのが宗教です。日本各地の温泉には様々な神話や開湯伝説がありますが、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の際に温泉で傷を癒したという話は有名です。古の時代は温泉の成分や効能はまだ解明されておらず、地中から湧き出たお湯が傷を癒す効果があるという事で神の湯とも称されるようになり、温泉は崇拝されるようになったといえます。歴代の天皇や皇族の方々も療養のため、各地の温泉を訪れています。日本三古泉の「道後温泉」には日本書紀によれば舒明天皇、斉明天皇、天智天皇、天武天皇が行幸したとされ、「有馬温泉」には古事記や日本書紀によれば舒明天皇や考徳天皇が行幸し、「白浜温泉」には斉明天皇と中大兄皇子が行幸したといわれています。いずれも古事記や日本書紀に記されるような大昔から温泉の利用がなされており、日本にとっては温泉はきわめて神秘的で尊いものであったと考えられます。

 

仏教と入浴


DSC_0937 / gtknj

また、仏教の伝来によって宗教的儀礼として身を清める沐浴が伝えられるようになると、僧だけではなく公家や武家の上流階級を中心に入浴の習慣が広まっていきました。寺院には沐浴をするための湯堂又は浴室がありましたが、財力のある上流階級の方々は自分の屋敷に湯堂や浴室を設けたのです。一方、財力のない一般庶民でも寺院が湯堂を一般開放するようになったことで、次第に庶民にも入浴の習慣が広まっていきました。奈良の大仏がある東大寺には日本最古といわれる風呂があり、湯堂には直径2m以上もある大釜で約1,000リットルもの湯を沸かしていたようです。そして、奈良の法華寺には光明皇后の願いにより建てられた「から風呂」と呼ばれる浴室があり、千人とも数えられる庶民の垢を落としたといわれています。「から風呂」は釜で湯を沸かして蒸気で浴室を温める風呂でいわゆるサウナ風呂です。床下から釜の湯の蒸気がすのこを通り抜けて浴室に充満し、庶民が汗を流したと伝えられています。

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